むだづかいの告白。
糸井重里
・たまに憑かれたように「むだづかい」をしてきたと思う。
いや、「むだづかい」をしようと思ってしたのではない。
あとで考えると「むだづかい」だとわかるというだけだ。
仕事をするようになってから、何本かのギターを買った。
フェンダーのテレキャスターを最初に買って、
その後にはストラトキャスターを買った。
さらにギブソンのレスポールも買った。
すべて贅沢品であり、そんなギターを買う資格はなかった。
ろくに弾けるわけじゃないのに、買うべきだと思った。
最初のテレキャスは日本のカワイ楽器で買ったけれど、
そのあとはアメリカにロケに行ったときに買ってきた。
最初のテレキャスターは、
バンドごっこをちょっとしていたときに少し弾いたが、
あとは、ほとんど弾くこともなかった。
いま考えると、あらためてひどいものだ。
ギブソンは、当時若かったギタリストにあげたのだが、
正月になって現金書留で彼なりの代金が送られてきた。
ぼくが買ったことは、よかったのだと思った。
他の2本も、音楽をちゃんと仕事にしている人にあげた。
律儀なその人は「預かっている」と言っているけれど、
返されても困るので、そのまま役立ててください。
とても年を取ってから買ったのはリッケンバッカーだ。
ある程度の年齢の方なら想像がつくと思うが、
ビートルズのジョン・レノンが弾いていたギターである。
当時のものとは変化もしているが、見た目はほぼ同じだ。
押しも押されもせぬ「大人買い」というやつだ。
ジョン・レノンの抱えていたギターと同じものがある。
これはもうジョンの一部分を持ったということだ。
もちろんアホなことだとはわかっている。
このギターは持っていることさえ知られていないので、
だれかの手に渡ることも、いまのところはないが、
行き先は、いつか遺言にでも書いておこうかね。
もちろん、いま現在ギターケースに入ったまま眠っている。
いろんな角度から「むだづかい」だと思われるだろうし、
じぶんでもそういうことは感じている。
おれは、バカであるが、別にいいじゃんとも思う。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
いまほしいのは、漫才のセンターマイク「サンパチ」です。
やっとボールが渡った