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ほぼ日刊イトイ新聞

2025-05-23

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・〈不得意なことにこそ、事件は起こる。〉

 京都に来ているのは、
 こっちのページでも詳しくお伝えしていますが、
 「Music Awards Japan2025」のプレゼンターとして、
 受賞者に「ルビー(トロフィー)」を渡すためでした。
 その瞬間までスタッフにも「受賞者」は明かされてないし、
 ぼくがその場に立つことも内密に進行していたので、
 お知らせしたりお伝えすることも、今日になりました。
 と、それはそれとしてね。

 こういう役というのは、段取りが付きものなのですよ。
 こういうタイミングで、ここからここまで歩いて、
 ここで止まって、こっちを向いて、お辞儀をして、
 こういうことを声に出して言ってください。
 次は、こういう紹介の映像が流れますので、
 そのフリとして、こういうことを言います。
 大丈夫です、すべてカンペが出ますから、読めばいいです。
 はい、老眼でも近眼でも読める大きさの文字です。
 そして、渡されている封筒を開けまして、
 ちょっと溜めをつくって、書いてある名を読み上げます。
 というようなことを、最低限でもできなきゃダメです。
 でも、とにかく、その、それくらいのことができないの。
 決められたことを再現するのが、病的に不得意なんです。
 最近のテレビ番組なんかだと、タレントさんが、
 いま思いついたように言うセリフも、台本通りが多いです。
 さすがに、ぼく自身の挨拶のような部分については、
 台本のなかには書いてありませんから、これはよかった。
 しかし、そういう場合には、ぼくはぼくのセリフを
 考えておかなきゃならないということを、
 うっかり忘れていました。
 段取りに気を取られて、自信と余裕を失っていたからです。
 「暗記とかしなくて大丈夫です、カンペで出ますから」と、
 微笑みながら言ってくれたディレクターもいて、
 安心してようと心に決めて壇上でライトを浴びたのですが。
 デジタルカンペ、消えちゃったんです、そのときに限って。
 さらには、挨拶も頭のなかに用意してなかったし、
 カンペ消えちゃうし、不得意なことにこそ事件は起こる。
 もういまさらこの年齢で、不得意を得意にしようとは
 思わないですが、スリルのある人生はまだまだ続きそう。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
それにしても、この音楽祭は、出場者たちが本気だったなぁ。


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